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
世界は不条理に満ちている。天災は絶え間なく各地で発生し、疫病は思いも依らぬ大混乱を誘発する。人間自身が引き起こす戦争でさえも、末端にとっては不条理に他ならない。それらは共通して、予期せぬ突然の非情な“死“を伴う。人間に予測できるものなんてちっぽけで、また、人間が思い通りにする事ができる事象など限られている。この世の中は大層理不尽で、馬鹿げている。
「Telu Telu Boy」は日本の伝統的な大衆民具である「てるてる坊主」をモチーフとし、現代日本で見られるキャラクター文化を背景に、若者=Boyとしての現代社会を象徴するアイコン(偶像)である。天候や天災という人間を襲う最も典型的な不条理を通して、混沌とした現代を生きる若者の生死や虚無感を表している。
「てるてる坊主」は、“天気“と密接に関係しており、日本では古来より風習として翌日の晴れを祈願する際に、白い布や紙を球状に覆い、紐で縛り、そして吊るしていた。この行為は自然災害が頻発する日本独特の文化であり、ある種のおまじないの意味合いがある。私たちは希望を込めて「てるてる坊主」を吊るすのである。それは、自然と対峙し不条理な天災に抗う術、とも捉えられるだろう。「てるてる坊主」の起源は幾つか通説があるが、それらは概ね「生贄」のようなものである。かつては命を捧げることで、自然の猛威を鎮めようとしていた。それが現代までに風習として残り伝わっているとされている。
天気という外的要因は、人間の感情をいとも簡単に変化させる。天候によって、土地の雰囲気やそこに住む人々の集団的性格にさえも影響が及ぶ。基本的な土地の性格はあるものの、天気は日々絶え間なく変わり続ける。特に可もなく不可もなく、天気の様に日々緩やかに変わり続ける事が人生における“日常“なのだとしたら、突如として襲う大きな変化は、人間に日常というものを意識させ、そして何が日常で、何が非日常なのかという認識すらも変えてしまう。不条理な天災は私たちに突如として日常を意識させると同時に、大きな傷跡を残していく。それでも私たちは、その不条理を受け入れて、生きていくしかないだろう。その葛藤の末に、人間の本質を捉えるいくつかの答えがあるのかもしれない。
私たちはどのように様々な不条理と向き合い、乗り越えていくことができるのか。
希望を込めて、問い直したい。
「あした、天気になあれ」と、願うように。