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ごみ袋のごちゃ -地球の表紙をめくる-
Gallery & Cafe VUCA (新潟)
2023年11月24日-2024年1月28日
この度GALLERY AND CAFE VUCAでは、「ごみ袋のごちゃ -地球の表紙をめくる-」を 開催いたします。2021年の冬に同作家と弟の共作であるTelu Telu Boy 展(名義:今井兄弟)を開催してから2度目のキャラクターアート展となります。
「ごみ袋のごちゃ」は、今年9月にYouTubeにて突如公開されたアニメーションを皮切りに、イラストや4コマ漫画、LINEスタンプなど多岐にわたるコンテンツを展開している今井の個人作品です。
企業・公共団体のプロモーションや地域おこしへの注目集めるため爆発的に増えた「ゆるキャラ」を始め、現代ではIPビジネスの市場が急ピッチで拡大しています。今日ではキャラクターがアイドルやモデルに成り替わり、大手メーカーのCMなど、広告メディアで目にすることが日常茶飯事となりました。いわゆる「バズリ」が成功要因とされるSNS主体の文化発信の中でその消費は目まぐるしく、キャラクターは人物や動物よりも「使い捨て」の激しいものとなっています。本作「ごみ袋のごちゃ」では”ごみ”や”ごみではないもの”を頭に詰め込んだ主人公が登場します。モチーフであるごみ袋はごみを捨てる為だけの存在です。それはまるで目の前に転がる造られた流行を能動的に受け入れて、生命を費やしていく私たちの存在にも似ています。これは消費社会のアイコンとも言えるキャラクターによって問題定義がなされるアイロニーです。
しかし、ごちゃは物語の中で仲間や生き物と自然に触れて「大切なもの」を見つけていきます。それはメディアの中だけでは得ることのできない、現実世界の体験や体感による成長です。私自身、食生活の改善から立ち直ることができた過去があります。身体を創る「食の大切さ」に気づけた実体験をもとに、VUCAのカフェは自然食をテーマに据えています。例えば、野菜の選び方や使い方、調理方法一つで美味しさが一変するように、些細な要因で私たちの人生は彩られたり苛まれたりします。生活は選択の積み重ねです、当然消費することにも選択が必要になります。本展覧会の会期中、VUCAで過ごす皆さまの時間が「自分の中の大切」を捉える一つのきっかけになればと願います。
■本展出品作品について(今井翔太)
「単に、人生を描くためなら、地球に表紙を被せるのが1番正しい」
新潟を代表する文豪、坂口安吾が残したこの言葉は全てを内包しています。人間の一生は、地球という一つの共同体の中で機能しているシステムの一部に過ぎません。細胞の一つ一つに細胞膜や細胞壁があるように、地球という枠組みから人間は逃れることができません。その枠組みに”表紙を被せる”という人間中心主義から外れた視座から、安吾はこの世界を見ていたと思っています。
本展はこの言葉を引用して「地球の表紙をめくる」という副題を付けました。ごみ袋のごちゃは単なるキャラクターではなく、この世界を表現するアート作品です。人工物であるごみ袋が命を持った「ごちゃ」が、その立場から世界を知っていきます。ごちゃの目にはこの世界にあるもの全てが美しく映ります。人間でないからこそ、人間中心主義から外れた、初めて世界の様々なことを見て知って体験する子どものような純粋さを持って私たちの認識に問いかけます。その問いを考えることが、地球を考えること、環境問題を考えること、アートとエコロジーを意識することに繋がります。形こそ現代のキャラクターらしいポップな展示ですが、その裏にあるメッセージも読み取って貰えたら幸甚です。私たちやごちゃは地球の一部として存在し、地球そのものでもあります。ごちゃの物語を表紙をめくって覗いてみてください。